ガタガタと雨戸が鳴っていた。
大雨で風も強かったので、閉めきったままにしていた。昼間なのに部屋の中は薄暗く、外の様子もわからない。連日の雨で出かける気にもなれず、何か楽しいことないかなぁと、ぼんやり過ごしていた。
途中で、停電もした。
急に部屋が静かになって、使えるものが何もなくなる。こんなに何もできないのか、と少し途方に暮れた。雨と風の音だけが、やけに大きく聞こえていた。
電気が復旧したとき、ふと思い出した。そうだ、雨って防音になるんだった。
ザーッという雨音が、まわりの音をやさしく包み込んでくれる。これなら少し音を大きくしても気にならない。テレビをつけて、スピーカーをつないで映画を流したら、雨戸で暗くなったリビングが、ちょっとした映画館になった。

不思議なもので、「家で快適に過ごしたい」と思った瞬間、今度は部屋の散らかりが気になりはじめた。せっかくの映画館なのに、これじゃもったいない。
まずはリビングから。片付けはじめると止まらなくなって、トイレ、風呂、キッチン、書斎と、いつのまにか家じゅうに広がっていた。
掃除しなきゃ、とずっと思っていたのだ。思っていただけで、なかなか動けなかった。それが大雨のおかげで、すんなり片付いてしまった。外に出られない時間が、家と向き合う時間に変わった。
台風は困りもので、停電だって歓迎できるものじゃない。それでも自分にとっては、結果的にあってよかった時間になった。止められない天気にも、解釈の幅を感じた。
そして、雨が上がった次の日の朝。
雨戸を開けて、久しぶりにベランダに出てみると、そこに小さなカエルがいた。

……ここ、2階なんだけど。
どこから、どうやって登ってきたんだろう。
もしかしたら彼も、長い雨に退屈して、ちょっと遠出してみたくなったのかもしれない。
