インターネットと聞くと、空にうかぶ雲のようなものを思いうかべるかもしれません。でも、本当の姿はもっと地味です。住所とケーブルの集まりです。
この記事の結論
- インターネットは「住所(IPアドレス)」と「線(ケーブル)」の集まりです。空の雲ではありません。
- 番号の住所を、人が読める名前に直す住所録もあります。それが DNS という仕組みです。
- 通り道には、チェックポイント(関所)がいくつもあります。だから「一部だけ使えない」ことが起きます。
インターネットは「線でつながった住所の集まり」
世界中のコンピュータには、1台ずつ「住所」がついています。その住所と住所の間を、ケーブルの「線」がつないでいます。インターネットは、ほぼこれだけの仕組みです。
郵便によく似ています。荷物を送るには、まず送り先の住所が必要です。そして、運ぶための道路とトラックも必要です。
インターネットにも、住所の役をするものと、線の役をするものがあります。どちらか片方だけでは、荷物は届きません。
この記事では、その2つがどうやって今の形になったのかを、順番に見ていきます。
はじまりは、4か所をつないだだけでした

JPNIC の「インターネット歴史年表」を見てみます。今のインターネットの原型が動き出したのは、1969年10月でした。ARPANET(アーパネット)という名前です。
つないだ場所は、たった4か所です。いまの世界中の広がりは、ここから始まりました。
次に決まったのが、荷札の書き方と、運び方のルールです。1983年1月1日、ARPANET はそのルールを TCP/IP に切り替えました。「ティーシーピー・アイピー」と読みます。
このとき、今も使われている IPv4 という住所の書き方が、使われ始めました。
TCP/IP は、言いかえれば「荷札の書き方と、運び方の共通ルール」です。世界中の機械が、同じルールを守っています。だから、作った会社が違っても話が通じます。
同じ1983年の6月23日には、DNS(ディーエヌエス)という仕組みが作られました。あとで出てくる「住所録」のことです。
私たちがふだん見ている「ホームページ」は、もう少しあとの話です。World Wide Web を考えたのは、ティム・バーナーズ=リーという人でした。1989年のことです。
これは CERN(欧州原子核研究機構)の説明にあります。1990年の終わりには、最初のサーバーと閲覧ソフトが動いています。閲覧ソフトは、いまのブラウザにあたるものです。
そして1993年4月30日、CERN はそのソフトの中身を、だれでも無料で使えるようにしました。中身のことを、ソースコードと呼びます。ここから一気に広がります。
日本での始まりも見てみます。
- 1984年10月JUNET(ジェイユーネット)が、大学3校をつないで始まりました。東京大学・東京工業大学・慶應義塾大学です。
- 1992年11月会社が売る接続サービスとしては、AT&T Jens の「SPIN」が日本で最初とされています。
お金を払ってだれでも使えるようになってから、まだ30年ちょっとしかたっていません。
住所(IPアドレス)と、住所録(DNS)
IPアドレスは、機械につけられた番号です。「192.0.2.34」のような形をしています。これが住所にあたります。
ただし、人はこんな番号を覚えられません。そこで出てくるのがドメイン名です。「yoraku.art」のような、読める名前のことです。
この名前と番号を結びつけるのが DNS です。JPNIC は DNS を「インターネットの住所録」と説明しています。名前から番号を調べることを「名前解決」と呼びます。
この住所録は、1冊にまとまっていません。世界中のサーバーが手分けして持っています。並び方は、上から下へ枝分かれしていく形です。
- いちばん上「ルートサーバ」があります。住所録の目次にあたる役です。
- その下「jp」や「com」があります。国や種類ごとの区切りです。
- さらにその下会社ごとの名前があります。「yoraku.art」はここです。
上から順にたどっていくと、目的の番号にたどり着きます。
つまり、あなたの会社のホームページが開くまでに、少なくとも2段階あります。まず名前を番号に変えます。次に、その番号の相手に荷物を届けます。
どちらか片方が止まれば、ページは開きません。
線のほう:海底ケーブルとプロバイダ

海の向こうのサイトを見るとき、電波が海を飛んでいるわけではありません。海の底にケーブルが敷かれています。
総務省の令和2年版情報通信白書は、こんな数字を引用しています。国をまたぐデータ通信の99%が、海底ケーブルを通っているという数字です。想像よりずっと物理的な仕組みです。
国内の部分は、プロバイダ(ISP)が受け持ちます。あなたの会社やお店から、海底ケーブルにつながるまでの道のりです。プロバイダは「地元の運送会社」のような役です。
IPアドレスも、このプロバイダを通じて配られます。JPNIC の説明では、次のように上から順に分けられていきます。
- IANA世界全体の大元です。ここが大きなまとまりで持っています。
- 地域の登録組織アジア太平洋やヨーロッパなど、地域ごとにまとめる組織です。
- プロバイダ地域の組織から受け取り、契約した会社や家に配ります。
- 利用者あなたの会社やお店が、最後に受け取ります。
ですから、勝手に好きな番号を名乗ることはできません。番号が重なると、荷物が届かなくなるからです。
住所が足りなくなりました
1983年から使われている IPv4 の住所は、全部で約43億個です。世界の人口より少ない数です。
ひとりが何台も機械を持つ時代になり、足りなくなりました。JPNIC によると、大元の在庫は2011年2月3日になくなりました。アジア太平洋地域の在庫も、2011年4月15日になくなっています。
そこで作られたのが IPv6 です。使える住所の数は、およそ3.4×10の38乗あります。JPNIC は「天文学的な数字」と書いています。数えきれないほど多い、という意味です。
いまは、IPv4 と IPv6 の両方が動いています。新しい住所と古い住所が混在する、つまり混ざっている状態です。
ふだんは気になりません。でも、調子が悪いときに、この違いが表に出てくることがあります。
だから「一部だけ使えない」ことがあります

ここまで読むと、想像がつくと思います。インターネットは1本の管ではありません。住所録、線、プロバイダ、そして新しい住所と古い住所。
つまり通り道に、チェックポイント(関所)がいくつもあるということです。
台風や停電のあと、「電波はあるのに、一部のアプリだけ使えない」ことがあります。スマホが壊れたわけではありません。通り道のチェックポイントのどれかが、止まっているだけです。
困ったときは、まず次のどちらなのかを見てください。
- 全部だめどのサイトも、どのアプリも開かない。
- 一部だけだめ開くものと、開かないものがある。
これを見分けるだけで、原因のある場所がだいぶ絞れます。
実際にそうなったときの話と、自分で確かめる方法 → 電波はあるのにネットがつながらない原因は?
よくある質問
Q. Wi-Fiとインターネットは同じものですか。
別のものです。Wi-Fi は建物の中の無線、つまり家の中の廊下にあたります。インターネットは、その外につながる道路です。Wi-Fi につながっていても、外の道路のほうで問題が起きていれば、サイトは開きません。まずルーターのランプが点いているかを見てください。それが最初の目印になります。
Q. IPアドレスは自分で好きな番号を決められますか。
決められません。JPNIC の説明では、IPアドレスは上から順に配られます。IANA という大元から、地域の登録組織、プロバイダ、そして利用者へ、という流れです。番号が重なると、荷物が届かなくなるからです。ふつうの会社やお店は、契約したプロバイダから割り当てられた番号を使います。
Q. ドメイン名とホームページは同じですか。
違います。ドメイン名は住所の表札で、ホームページは建物の中身です。表札だけあっても、中身はありません。中身を作っても、表札をそこに向けていなければ、外からは見えません。2つは別に用意して、あとでつなぎ合わせます。
Q. IPv6に切り替えたほうがよいのでしょうか。
あなたの会社の側で何かする必要は、ふつうはありません。IPv6 への対応は、回線とプロバイダ、機器の側で進みます。いまは IPv4 と IPv6 の両方が動いています。自分の家やお店の回線がどちらで通っているかは、契約しているプロバイダに聞くのが確実です。
参考
